星の王子さま

 今日、初恋の人と仲良く隣に座って、好き同士で、たわいもないことをおしゃべりしている夢を見た。

 私にとって、初恋の人は星の王子さまで、星の王子様のまま終わってしまった初恋だった。

 彼は、本当に(客観的に見ても)星の王子様の様な可愛いのにきりっとした顔立ちで、どこか西洋の美少年を思わせるような雰囲気で、いつもにこにこしていた。それゆえ、決して学校の目立つ集団に属していたわけではないし、属そうともしなかったのに、同級生、先生含めに人気があったし、彼のことを嫌いな人はいなかったんじゃないだろうか。

 彼は傍から見ても無類の読書好きで、小さいころから、何はともあれ本にかぶりついていた私としても、それがさらに彼を魅力的にし、休み時間や放課後の空き教室で本を読んでいる彼を盗み見てはひそかに胸をときめかせていた。

 彼は人当たりがよく、無邪気で、人を引き付ける透明感のあるルックスで、本が大好きで、中高生という多感な時期にも、イケてるイケてないで人を判断しないような、私がほしい人間的魅力をぎゅっと凝縮させたような人だった。

 一回だけ、バレンタインの日に彼に小さなチョコを渡そうとしたことがある。しかし、私は、もうその年齢で、白百合の隣に雑草は似合わないと自覚していて、その自意識が、そのチョコを渡させなかった。結局自分で食べてしまった。

  だから私は今でも、白百合に近づきたくて、可愛く、綺麗になりたいと、少し高い化粧水を買ってみたり、姿勢を伸ばそうと時節思い出しては胸を張るのだろう。

 星の王子様を読むたび、あの子はどうしてるかなと思いをはせる。美しいまま終わってしまった思い出は、いつまでも自分の心に泉のように静かにあって、時々そこを訪れる。

 星の王子さまは、大人になった社会で、あのきれいな光を失わずにちゃんと生活しているんだろうな、と、妙な確信をもって思いをはせる。